掲載日 令和3年7月1日
ダニ媒介脳炎及び急性脳炎に関する情報提供について
○ ダニ媒介脳炎
1 ダニ媒介脳炎とは
ダニ媒介脳炎は、マダニが媒介するウイルスによる感染症です。国内での感染は、北海道の一部地
域で報告があります。アジアからヨーロッパにかけて温帯地域に存在しています。
2 原因と感染経路
病原体は、マダニによって媒介されるフラビウイルス属のウイルスです。
主に、ウイルスを保有したマダニに刺されることによって感染します。感染したヤギやヒツジの原
乳を飲んでも感染することもあります。
3 症状
【中央ヨーロッパ型】
潜伏期間は通常7~14日で、発熱、筋肉痛などのインフルエンザ様症状が2~4日間続きます。
その後数日経って痙攣、めまい、知覚異常などの症状がでることがあります。
致死率は1~2%で、回復後も頭痛、集中力の低下、無気力、うつ状態など後遺症が残ることが
あります。
【ロシア春夏脳炎】
潜伏期間は通常7~14日で、突然に高度の頭痛、発熱、悪心、異常なまぶしさを感じるなどの症
状が発生し、その後順調に回復することもありますが、痙攣、精神症状、首や腕が弛緩して動かな
くなるなどの症状がでることがあります。致死率は20%で、回復後も頭痛、集中力の低下、無気力、
うつ状態など後遺症が残ることがあります。
4 治療
特別な治療法はなく、症状に応じた対症療法が行われます。
5 予防のポイント
一部の国ではワクチン接種が行われています。
流行地域でのマダニの吸着を防ぐことが最も重要です。野山、河川敷など、やむを得ず立ち入る場
合は肌の露出を避け、虫よけ剤を適宜使用します。
地面に寝転んだり腰をおろすことは避けましょう。
また、衣類にマダニがついていることがあるので、帰宅後は、早めに着替え、屋内にマダニを持ち
込まないように注意しましょう。
6 診断・感染症法との関連
診断は、病原体の検出、病原体の遺伝子の検出あるいは抗体検査によります。
感染症法では、四類感染症に定められており、診断した医師は直ちに最寄の保健所へ届け出ること
が義務づけられています。
7 関連情報
・ダニ媒介性脳炎の国内外での状況(ヒトと動物の共通感染症研究会ウェブサイト)
○ 急性脳炎(ウエストナイル脳炎、西部ウマ脳炎、ダニ媒介
脳炎、東部ウマ脳炎、日本脳炎、ベネズエラウマ脳炎及び
リフトバレー熱を除く)
1 急性脳炎とは
急性脳炎は様々な病原体による脳の炎症に起因する疾患の総称です。
感染症法では、「ウエストナイル脳炎、西部ウマ脳炎、ダニ媒介脳炎、東部ウマ脳炎、日本脳炎、ベ
ネズエラウマ脳炎及びリフトバレー熱を除く」と脳炎を主な症状とする他の届出対象疾患を除いて定義
されており、病原体が不明な場合も含まれています。また、「炎症所見が明らかではないが、同様の症
状を呈する脳症もここには含まれる」と定義しています。
2 原因と感染経路
脳炎・脳症には、感染症、ワクチン接種、自己免疫疾患などが原因でおこるものがあります。
感染症による場合、病原体は多種多様で、インフルエンザウイルス、単純ヘルペスウイルス、エン
テロウイルス、アデノウイルス、麻疹ウイルス、風しんウイルス、水痘帯状疱しんウイルス、ヒトヘ
ルペスウイルス6などのウイルス、マイコプラズマ、スピロヘータ、レプトスピラ、リケッチアなど
の細菌、真菌、寄生虫(トリパノ ソーマ、旋毛虫など)によるものがあります。
病源体によって感染経路は異なります。
3 症状
病原体が脳に感染し炎症を起こすものと、病原体に感染後の免疫反応に伴い脳に炎症が起こるも
の、炎症ではないが同様の症状の脳症によるものがあります。
様々な病原体によるため症状も多様ですが、多くは病原体による感染症の症状が先にあり、急性脳
炎が始まると、高熱、意識障害やけいれんなどの症状が出ます。
4 治療
病原体により治療法は異なり、病原体に応じた適切な抗ウイルス薬、抗菌薬、抗寄生虫薬を用いま
す。また、症状に応じた対症療法が行われます。
5 予防のポイント
病原体によってはワクチン接種による予防ができます。
様々な病原体によるため、それぞれの異なる感染経路に応じた対策ができます。
6 診断・感染症法との関連
診断は症状によります。感染症法で届出対象になるものは、意識障害を伴って死亡した者、又は意
識障害を伴って24時間以上入院した者のうち、 「38℃以上の高熱」「何らかの中枢神経症状」
「先行感染症状」のいずれかの症状を伴った場合になります。
感染症法では、五類感染症(全数把握対象)に定められており、診断した医師は7日以内に最寄の
保健所へ届け出ることが義務付けられています。
7 関連情報
急性脳炎(ウエストナイル脳炎、西部ウマ脳炎、ダニ媒介脳炎、東部ウマ脳炎、日本脳炎、ベネズエラウマ脳炎及びリフトバレー熱を除く)について(国立感染症研究所)