手間が商品
日高の昆布は、「手間を売る商品」と言えるでしょう!
1年365日のうち、採り昆布と言われる昆布漁は、平均すると20日前後です。
しかしながら、 生のまま出荷する鮮魚と違い、昆布は加工品です。 加工品と言うからには、手間と時間がかかり、さらには漁師の熟練技が必要です。
加工は、皆さんも目にすることがある光景で、昆布を天日乾燥するところから始まるように見えます。
現実は、それより前、6月中旬、昆布干場(こんぶかんば)の手入れから始まっています。 玉砂利を敷き詰めただだっ広い干場を均し、雑草を1本1本抜きます。
そして7月からいよいよ採り昆布がはじまりあの天日干しの見慣れた風景になっていくのです。
ここでも見えない一手間が。昆布は干したまま乾燥するまでほったらかしではありません。 そのまま乾燥させると、干場の玉砂利が昆布に付着してしまいます。微妙な加減で動かすことが必要です。 ちなみにこの干す時間も長年の経験です。その日の天候、気温、湿度、風の変化を読み取って決まります。 昆布は、乾燥しすぎるとバラバラに割れてしまいます。
最初の乾燥が終わった昆布は、ビニールシートに包み、通称「小屋」と言われる昆布倉庫に入れ保管しま す。この保管は、庵蒸(あんじょう)と言われ、これにより昆布独特のあの黒い色が醸し出されます。
頃合いを見計らって一度露にあて昆布をほんの少し柔らかくして、3尺5寸(105センチ)に切りそろえて結束 します。そしてまた小屋で寝かせます。
まだまだ、続きます。
寝かせた昆布は、月1回ある集荷にあわせて選葉しなければなりません。 選葉の前には、もう一度天日にさらす日入れの作業があります。 そして、いよいよ選葉です。これは、職人技で、さらに気が遠くなる作業です。 なんせ、3尺5寸に切りそろえた昆布1枚1枚を見てさわって、光沢、幅、重さ、傷などを見極め、一等から五 等までに仕分けます。 その後、20キロを1駄として等級毎結束して出荷されます。
選葉がどれくらい気が遠くなるかというと、 一等昆布であれば、1駄は20キロ、3尺5寸の昆布1枚は35から40グラム、単純に計算すると、 それだけでも500枚以上にもなります。 1回の出荷に20駄出荷すると1万枚以上を選葉することになるのです。
7月から10月までが採り昆布の時期、 この時期、日高の漁師は、天気がよく凪れば昆布採り、天気が悪ければ、刺し網漁業にでて そのあと夜遅くまで選葉に追われる毎日です。 昆布の出荷は、操業が終わった後も翌年1月頃まで続きます。
ここに書いた作業手順は、一例に過ぎません。 昆布漁師は、よりよい昆布を出荷するためにそれぞれ、親、爺様から教えられたところに更に自分で工夫 しています。人それぞれで作業の仕方も違いがあります。同じなのは、ただ一言「手間がかかる」と言うこと だけです。
水産課職員による昆布干し作業体験記はこちら!
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